経営再建中の液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)が、構造改革の一環として、海外の工場を中心に少なくとも1000人以上の人員削減を検討していることがわかりました。このうち、国内は200人規模の希望退職を募る方向で調整しています。

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ジャパンディスプレイとはどんな会社

産業革新機構の主導で、ソニー・東芝・日立のディスプレイ部門が統合されて誕生し、2012年4月1日に事業活動を開始しました。台湾資本となったシャープを除く全てのディスプレイメーカーが統合され、政府系ファンドが経営に関与する文字通りの「日の丸液晶」です。

スマホ向けの小型液晶で高いシェアを持つ、小型向け液晶パネルの出荷額でのシェアは2015年度で世界1位であり、他の年度でもシャープやLGなどとトップを争っています。一方、大型パネルに関してはまったくシェアがありません。ノートパソコンやタブレットといった中型パネルもシェアがありません。

例えば2016年度において、スマホを中心とするモバイル向けが8割、とりわけiPhoneへの依存率は5割を超えるなど、スマホ向け小型液晶事業に、さらに言うとiPhoneと言う1つのスマホに極度に依存している。

2017年度まで一度も黒字化できた年度が無い。特に、有機ELパネルに対抗できるはずの次世代液晶パネルの開発に成功し、黒字化に自信があった2017年3月期に、iPhoneが他社の有機ELパネルを採用したこともあって赤字となったため、液晶事業の見直しが必要となっています

2016年6月にはアップルの強い要望で、1900億円を投じて最新世代の液晶パネル工場であるJDI白山工場を建設してしまったが、iPhone6sの販売不振によるiPhone7の生産調整の為に稼働は半年遅れの2016年12月となり、しかも結局アップルは2017年のiPhone8から有機ELに移行するなど、アップルに振り回されています。

2017年現在、超狭額縁の次世代液晶パネル「フルアクティブフレックス」で有機ELに対抗する計画や、JOLEDを子会社化してJOLEDの印刷方式で有機ELパネルの2017年度中の量産を目指す計画や、JOLEDを子会社化せずにJDI自身の蒸着方式で有機ELパネルの2018年度中の量産を目指す計画などがあり、2020年代の折り畳み型ディスプレー時代に向けて、液晶と有機ELの両面からの経営刷新の可能性を探っています。

今回のリストラの内容は?

現在の赤字は、需要が急伸する有機ELパネルへの移行の遅れが1番の原因です。それに対する改革の方針は、先にのべた通りです。(2017年現在のところ)

海外を中心に1000人の人員削減(うち国内は200人)を打ち出しています。

9日に発表する構造改革の計画では、国内に関して、石川県にある主力3工場の再編を検討している。能美工場(能美市)の液晶生産を停止し、最新鋭の白山工場(白山市)に人員を移して高価格帯のスマートフォン向けの液晶の生産に集中させる方向で検討しています。

海外工場は、日本で製造した主要な部材を組み立てる工程などを担っています。今後は外部に発注するなどしてコストの削減を図る方針とみられます。

みずほ、三井住友、三井住友信託など主力取引銀行3行は1100億円の融資枠を設定、JDIを支援する予定です。国内外の事業会社やファンドからの外部資本の受け入れも検討するそうです。