ボクシングの村田諒太選手は、目の力を鍛えるビジョントレーニングを練習に組み入れ、反射神経向上に役立てています。一方、ビジョントレーニングや、球技が苦手な子供や、文章を集中して読むことができない子供の学習障害の改善にも役立つといわれています。どのようなものか調べてみました。

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出典:藤枝おんぱく

ビジョントレーニングで伸ばすのは、「視力」ではなく「見る力」

ビジョントレーニングとは、ものを目でとらえる力や、目で見たものを脳で処理し、体を使って動かす機能を高めるトレーニングです。黒板を写すのが遅い、文章内の同じ行を何度も読んでしまう。体のバランスがわるい、これらは、ビジョントレーニングで軽減出来る可能性があります。また、プロスポーツ選手のパフォーマンス向上にも貢献します。

見るというと、最初に思い浮かぶのは「視力」ですが、「見る」ということは、視力以外に様々な機能を使用します。例えば、自由自在に目を素早く動かしたり、目から取り込んだ情報を正しく頭で処理したり、またそれらの情報に合わせて体の動きを調節したりするなどです。これらの正しく物を見るために必要な機能を高めるのがビジョントレーニングです。

「見る力」って視力とどう違うの?

「見る力」に問題があると、次のような事が起こる事が考えられます。

  • 板書をノートにとるのが苦手
  • 写生をするのが苦手
  • 本を読むとき文字や行を読み飛ばしてしまう
  • 算数の図形問題が苦手
  • 自転車に乗れない

「見る力」すなわち「ビジョン」は、ただ単に視力のことを指すのではなく、「眼球運動」で入力し、脳で「視空間認知」を情報処理し、「目と体のチームワーク」で適切に動かす出力する仕組み全てを指します。

「眼球運動」

視線を素早く動かしたり、物を目で追ったりする「入力」の部分にあたります。これらは次の3つにわかれます。

・追随性眼球運動:見てる物に合わせて眼球を動かす運動
・跳躍性眼球運動:1点から別の1点に素早く視線をジャンプさせる運動
・両目のチームワーク:対象物の距離によって両目を寄せたり、離したりする運動

「視空間認知」

「入力」された情報を脳で処理するステップです。主に以下のような処理を行います。

・背景と見たい対象を区分する
・色や形を別ける
・位置、色、形にかかわらず、「同じ」だと認識する
・空間的な位置を認識する

「目と体のチームワーク」

「入力」「処理」された情報は、体の動きとして「出力」されます。このとき、視覚の動きにあわせて体を動かすことが重要です。

たとえば、ボール遊びを例にとってみましょう

1.転がってくるボールを目でとらえて、目で追う(入力)
2.ボールが到達する位置と、タイミングを脳が把握する(処理)
3.目で追いながら、体を動かして、手を伸ばしてキャッチする(チームワーク)

このように、ボール遊びは、視覚情報を、入力、処理、チームワークの一連の流れで可能になってきます。「見る」と「動く」の連携は、ボール遊びにとってとても重要なことなのです。

発達障害の子どもにビジョントレーニングは有効?

発達障害のなかでも、学習障害(LD)の子供たちのなかには、「見る力」の弱さが原因となっている子供がいることがわかってきました。

見る力が弱いせいで、教科書を読むのが苦手、板書をノートに取れないなどを切っ掛けに、勉強が苦手になってしまっているのです。

そのような場合、ビジョントレーニングを受けることで、問題の解決につながる可能性があります。

 

まとめ

今回は、どこでビジョントレーニングを受けられるのかや、具体的なトレーニングの方法までご紹介できませんでしたが、ビジョントレーニングは普段の療育の場で取り入れられていることが多いです。自分の子供に思い当たる節があったら、近所のそういう場所で聞いてみるのもよいでしょう。関連書籍も多数出版されています。かくいう私もとても球技が苦手で、子供の頃に、ビジョントレーニングがあったら、受けてみたかったです。

参考サイト:ビジョントレーニングとは?「見る力」と学習障害との関わりは?具体的なトレーニング法をご紹介します(https://h-navi.jp/column/article/35026384)